(以下の内容は平成二十八年二月九日火曜『八重山日報』第四面「歐洲史料尖閣獺祭録」連載第八囘に掲載します)
http://www.shimbun-online.com/latest/yaeyamanippo.html


昨日、西暦1808年のクラットウェル氏『世界各地名新辭典』でTiaoyusu(釣魚嶼)を琉球に屬せしめてゐることを述べたが、
http://senkaku.blog.jp/archives/45741243.html
當然ながらHoapin-su(花瓶嶼、和平嶼)も同書に載ってゐる。
『The new universal gazetteer, or, Geographical dictionary : containing a description of all the empires, kingdoms, states, provinces, cities, towns, forts, seas, harbours, rivers, lakes, mountains, and capes in the known world』(世界各地名新辭典)第二册。
Clement Cruttwell氏編。西暦1808年倫敦刊。
ピッツバーグ大學藏本、サンフランシスコのインターネット・アーカイブ社(archive.org)公開電子版。
https://archive.org/details/newuniversalgaze02crut
new_universal_gazetteer_vol2_1808cruttwel
「Hoaipinsu, a small island in the Chinese sea, belonging to the group called Lieou-Kieou.」(和平嶼。シナ海の小島、琉球と呼ばれる一群に屬する。)
これはHoapinsuを誤ってHoaipinsuに作るが、配置はHoanの後である。

 原書標題頁の下方の附記によれば「with twenty eight whole sheet maps」(二十八全幅の地圖を附録す)とのことだが、第二册第四册電子公開本には地圖を附録しない。しかし附録地圖は確かに存在し、ミュンヘンのバイエルン州圖書館藏本には附録する。
https://opacplus.bsb-muenchen.de/metaopac/search?id=BV008286402
https://www.worldcat.org/oclc/260213024
アイルランド國家圖書館藏本にも附録する。
http://catalogue.nli.ie/Record/vtls000204007
インターネットの「Keys」といふ骨董店にも下の競賣記録がある。
「CLEMENT CRUTTWELL: THE NEW UNIVERSAL GAZETTEER [1808], Atlas vols, 2」
http://www.keysauctions.co.uk/lot/359582
http://www.the-saleroom.com/en-gb/auction-catalogues/keys-aylsham-salerooms/catalogue-id-srkey10088/lot-26dc181e-d25a-491e-b727-a5150111de40

 バイエルン藏本及びアイルランド藏本で尖閣に彩色が施されてゐれば良いが、わざわざ見に行って無色なら費用の無駄である。且つ西暦1752年以後、尖閣を琉球色に塗る地圖は幾つも有るので、あまり稀少價値も無い。ただ辭典の記述と併せればとても面白い。勿論、チャイナ色となってゐる可能性はほぼ無いので憂慮するには及ばない。誰か現代人が勝手に着色した可能性を除く。現代人の違法着色を防止するためにも兩館では早期に撮影されることが望ましい。

 クラットウェル氏の同じ地名辭典の舊版は西暦1798年に倫敦で刊行されたが、尖閣を載せない。
https://archive.org/details/newuniversalgaz00crutgoog
https://archive.org/details/newuniversalgaz01crutgoog
しかし附録の1799年版地圖はGeographicus骨董店のインターネット電子版で閲覽できる。尖閣は無着色である。
http://www.geographicus.com/P/AntiqueMap/China-cruttwell-1799
https://en.wikipedia.org/wiki/File:1799_Cruttwell_Map_of_the_World_in_Hemispheres_-_Geographicus_-_WorldHemisphere-cruttwell-1799.jpg
https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/5/54/1799_Clement_Cruttwell_Map_of_China%2C_Korea%2C_and_Taiwan_-_Geographicus_-_China-cruttwell-1799.jpg
Cruttwell_Geographicus_China-1799
切Cruttwell氏1799_Geographicus_China

クラットウェル氏の今一つの舊版(同標題)は西暦1800年にダブリンで刊行されたが、同じく尖閣を載せない。
http://babel.hathitrust.org/cgi/pt?id=pst.000056723618
http://catalogue.nla.gov.au/Record/3157436

西暦1800年に載せなかった尖閣を、西暦1808年には載せる。その前後が尖閣認知過程の一つの境目となってゐる。シュティーラーの「Charte von China」でも、西暦1800年版では琉球欄を設けず、西暦1804年版では琉球欄を設ける。ラペルーズ紀行が西暦1797年に刊行されて以後、數年を經てラペルーズの認識が地誌地圖に採用され始めたことを示す。
 西暦1752年以後、ゴービル(Gaubil)通信ならびにダンビル地圖(d'Anville)及びビュアシュ(Buache)地圖でTaioyu-su(Haoyu-su)、Hoapin-suの存在は知られてゐたので、地名として載せる書も存在するが、中々西暦1804年より早い年度で琉球所屬と明記する著作は無い。
 西暦1802年パリ刊のLouis de Grandpré氏著『Dictionnaire universel de geographie maritime』(世界海洋地理辭典)第一册、第二册にはHoapinsu及びTiaoyusuを載せるが、周長及び經緯度を載せるばかりで、琉球だとは書かない。
https://books.google.co.jp/books?id=mTFqza96QrcC
https://books.google.co.jp/books?id=HxVYI5-fi8YC
同じ書の西暦1803年パリ刊、増訂版第二册、第三册にもHoapinsu及びTiaoyusuを載せるが、周長及び經緯度を載せるばかりで、琉球だとは書かない。
https://books.google.co.jp/books?id=BoD3DKM2X9sC
https://books.google.co.jp/books?id=0PNCAAAAcAAJ
https://books.google.co.jp/books?id=Cl8xFU9F23gC
https://archive.org/details/bub_gb_hWbU_pJk9_8C

クラットウェル氏は、編輯人として中々の仕事をした人らしい。
https://en.wikipedia.org/wiki/Clement_Cruttwell



記録:
https://archive.is/KVkxm
https://web.archive.org/web/20151019055757/http://senkaku.blog.jp/archives/45743279.html


(以上の内容は平成二十八年二月九日火曜『八重山日報』第四面「歐洲史料尖閣獺祭録」連載第八囘に掲載します)
http://www.shimbun-online.com/latest/yaeyamanippo.html

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