吐葛剌富士。
吐葛剌富士

 ピナクル(Pinnacle)といふ島は尖閣以外にも幾つか有る。臺灣北方の花瓶嶼もイギリス海軍水路誌でPinnacleとされてゐたことも有った。ほかにも、吐葛剌列島の中之島がPinnacleと呼ばれてゐたりする。例文へば『THE GAZETTEER OF THE WORLD』(世界地名典)第七册(王立地理學會編、西暦1887年倫敦刊)。
https://books.google.co.jp/books?id=dggVAAAAQAAJ
pinnacle_gazetteer_of_worldVII

このPinnacleは北緯29度50分、東經129度50分。丁度吐葛剌列島の中之島の經緯度だ。「たくしま」の南南西となってゐるが、中之島の北北東に「たくしま」は無い。北北東で搜すと竹島が有る。
https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/d/d0/Osumi_island_ja.png
屋久島の北北西に位置する。しかしこんな知名度の低い小島を例に舉げるのも不可解だ。同じ『THE GAZETTEER OF THE WORLD』の中にもこの竹島を收録しない。多分Tana-ximaもしくはTane-sima(種子島)の筆誤だらう。
 前稿で舉げたドイツの航海術教科書に、北緯29度43分で種子島の南南西にPinnacleが載ってゐるので、
http://senkaku.blog.jp/archives/45599325.html
Handbuch_der_Schiffahrtskunde_Tiaoyusu

それを見た或る友人が「これは尖閣ではあるまいか」と言ふ。しかし可能性としては吐葛剌の中之島の方が高いし、あまりこんな事を色々考へなくてもよい。考へなくとも明らかな尖閣資料は多數有るのだから。