産經新聞 東京版 第二面 平成27年9月28日
産經東京版第二面270928e

http://www.sankei.com/politics/news/150928/plt1509280003-n1.html
中国の尖閣領有権主張、また崩れる 17世紀作製、初の近代的地図「皇輿全覧図」に記載なし
 清朝が1600年代後半に台湾を領土編入した後に作製した版図に、尖閣諸島(沖縄県石垣市)が含まれていないことが、拓殖大学の下條正男教授の調査で分かった。中国政府は尖閣諸島の領有権の正当性を主張する際、「台湾の付属島嶼(とうしょ)の一部であったこと」を根拠としてきた。下條氏は尖閣諸島領有の正当性をアピールする資料として政府・与党に働きかける考えだ。
 「皇輿全覧図(こうよぜんらんず)」と題する中国全土の地図で、1699年に清朝・康煕帝がイエズス会の宣教師に作製させた。中国全土で大規模な測量を行い、製作し、1717年に完成した。その後、初めての近代的地図として、中国全土の地図を作製する際の基準として利用されるようになった。この地図には1683年に福建省に編入した台湾、澎湖諸島は描かれているが、尖閣諸島は含まれていない。
 中国政府は、周辺海域の海底に石油などが埋蔵されている可能性が指摘された後の70年代に入ってから尖閣諸島の領有権を主張し始めた。中国国家海洋局は、ウェブサイト「釣魚島(尖閣諸島の中国名)-中国固有の領土」で、尖閣諸島を中国領と主張する根拠として明、清代の地図を列挙している。
 しかし、中国政府が尖閣諸島を「日本領土」と表記した1969年製の地図もすでに発見されている。下條氏は今回の発見を「中国政府が尖閣諸島の領有権を主張する際の歴史的根拠がないことを示す貴重な資料だ」と評価している。

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以上の産經の報道は、意義有るものとして基本的に評價したい。「皇輿全覽圖」は著名なもので、そこに尖閣が含まれてゐないことも隨分早くから知られてゐた。少しインターネットを檢索しただけでも、下リンクに出てゐる。
http://senkakujapan.nobody.jp/page099.html
http://www.appledaily.com.tw/appledaily/article/headline/20120928/34539294/

また、この地圖に描かれた臺灣の領土範圍については、當然臺灣で關心が高く、臺灣のデジタル展示でも大きく扱はれてゐる。
http://digitalatlas.asdc.sinica.edu.tw/map.jsp?id=A103000041#

「地圖に載ってゐないから領土ではない」といふ論法は、逆に「地圖に載ってゐれば領土だ」といふ論法を誘ひ出すことになる。好例が西暦1561年頃の明國『籌海圖編』の「沿海山沙圖」である。
パノラマ赤78文字
この『籌海圖編』の「沿海山沙圖」に赤色の破線を加へたのは、私の詳細な考證にもとづくものである。現チャイナ側は考證などお構ひなしに、地圖に載ってゐればチャイナ領土だと主張してゐる。この圖は「皇輿全覽圖」よりも約百五十年早い。「皇輿全覽圖」は小さな尖閣を省略しただけだ、と現チャイナが反駁することが預測される。
 小さな島が省略されるのは、現代地圖でも有り勝ちなことで、チャイナの主張によれば西暦1967年の「日本地圖」に尖閣が含まれない、
http://jp.eastday.com/node2/home/tj/node1626/node1630/userobject1ai69905.html
のださうだ。
1967日本地圖

このやうな屁理屈に對抗するためには、尖閣の西側に線を引いた地圖が極めて重要である。
表紙反駁マニュアル


ついでながら、今囘の産經の報道は、BBC中文網でも紹介されてゐる。
http://www.bbc.com/zhongwen/simp/world/2015/09/150928_japan_china_territorial_claims
http://www.bbc.com/zhongwen/trad/world/2015/09/150928_japan_china_territorial_claims

文中では私の紹介した圖について、「清國に含まれない」でなく「琉球に含まれる」と書いてゐる。分界線の御蔭である。