産經新聞記事 (紙面は一月二十九日木曜九州山口綜合第二十七面)
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2015.1.29 07:10更新
尖閣は台湾の一部…中国サイトずさんなプロパガンダ
 中国政府が開設した尖閣諸島(沖縄県石垣市)に関するサイトで、取り上げた資料の解釈に多くの誤りがあると、日本の専門家から指摘の声が上がっている。領有権の根拠とする文献資料を掲載するが、18~19世紀に発行された欧州の単なる航海情報誌を取り上げるなど、杜撰(ずさん)な点が目立つ。専門家は「資料の解釈をねじ曲げてでも、国際世論に訴えようとするプロパガンダ(政治宣伝活動)サイトだ」と批判する。(奥原慎平)

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 サイト「釣魚島(尖閣諸島の中国名)-中国固有の領土」は昨年12月30日、中国国家海洋局が開設した。

 「歴史事実と国際的法理を踏みにじる(日本の)行為を打ち負かす自信と能力がある」など過激な文句とともに、中国側の主張を裏付けるとする古地図や文献、国内外の論文リストを掲載する。

 だが、日本の尖閣研究家は、このサイトで紹介された2冊の欧州の本に着目する。19世紀に英国で発刊された「経緯度表」(Jパーディ著)と、18世紀にポルトガルで発刊された「航海術教本」(Mピメンテル著)だ。どちらも航海士育成などの目的で、東アジアの航路について説明した書物だとみられる。

 「経緯度表」には、島名が羅列された一覧表があり、「台湾」の直後に尖閣諸島と思われる島の名前が並ぶ。中国側は、釣魚島は台湾の一部であり台湾とともに中国に属する、と主張する。日清戦争後の下関条約(1895年)で台湾を日本に割譲したが、昭和27年の条約失効により、台湾と、その一部である釣魚島の領有権も中国側に戻ったという理屈だ。

 だが、尖閣問題に詳しい長崎純心大の石井望准教授(尖閣史)は「『台湾の次に釣魚島に行った』という航海記録を参考に記述したに過ぎない」と分析する。

 「航海術教本」も精査すると、日本の欄に赤道直下の島が含まれたり、台湾の欄にフィリピン・ルソン島が記載されるなど、島の帰属を表したといえない記述が多い。

 中国側の主張に対し、日本政府は「尖閣には領土問題は存在しない」との立場をとる。今回のサイトについても外務省中国・モンゴル第1課の担当者は「(領土問題は存在しないという)わが国の立場は揺らがない。中国の独自の主張にも外交ルートを通じて、しかるべく対応をとった」とする。

 だが、筑波大名誉教授、尾崎重義氏(国際法)は「中国側は法律家や歴史家からみると根拠になりえない資料も、精査もせずにアピール材料として出してくる。稚拙な解釈でも資料が増えれば、海外の世論に誤解を招きかねない。日本も政府、学者、マスコミを含め総力戦で反論せねばならない」と懸念を表明した。

 中国政府のプロパガンダサイトは今後、日本語、英語、フランス語、ドイツ語、アラビア語にも翻訳される見通しだという。

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 中国側がサイトで提示した『経緯度表』は、世界各地の経度と緯度を記した航海用資料だ。

 尖閣の前に台湾最北端の経緯度が示されるページがあることから、中国側は「尖閣は台湾に付属する」ことの証拠だと取り上げた。だが、この資料は実のところ、「釣魚島・台湾諸島一体説」を否定している。例えば台湾全島を示す別のページには、尖閣諸島が含まれていない。

 他のページをみると、台湾全島は「中国海」(南シナ海)に含まれ、中国大陸南部の沿岸各地を詳しく載せていた。一方、尖閣諸島は琉球と同様に「東海」(東シナ海)の中に書かれている。尖閣、宮古八重山諸島、琉球の順となっている。中国側の訴えとはまったく逆に、尖閣は琉球列島に属することを示した資料といえる。

 一方の『航海術教本』では、台湾と同じ欄に掲載された「レスマゴス」という島を、中国側は釣魚島だと主張している。

 だがレスマゴスは、文献によって尖閣諸島を指す場合もあれば、八重山諸島を指す場合もあり、一様には言えない。航海術教本のレスマゴスは、北緯の記述から見て、台湾北方にある「棉花嶼(めんかしょ)」だとみるのが妥当といえる。当時の技術でも、緯度は天体に基づき比較的、正確に計測されていた。
産経ニュース2