チャイナのアジア開發投資銀行(AIIB)について、
さも雄大な構想であるかの如く評する論説が
産經新聞に載ってゐる。

http://www.sankei.com/premium/news/150414/prm1504140007-n1.html
http://www.sankei.com/premium/news/150414/prm1504140007-n2.html
北京大學の王緝思といふ研究者の平成二十四年
の「西進」論説に、アジア投資銀行へ繋がる構想を
見たといふ内容だが、チャイナを買ひ被り過ぎてゐる。
王緝思の論説がどんな凄いものかと思って原文を
讀んでみると、全然大したことは無い。

http://opinion.huanqiu.com/opinion_world/2012-10/3193760.html
西進は「西部大開發」など、以前からの常談で
あって、その心は、東進しても日米に勝てないので
西進するしか無いといふ意だ。
上海機構だの何だの、いつもの調子である。
チャイナは歴史上、陸のシルクロードと海のシルク
ロードとの中間で右往左往する國柄である。
唐までは陸のシルクロード文化の大浪にさらされ、
宋では小地域に逼塞し、元以後は逆に陸のシルクロード
で攻勢(西進)に轉じたが、同時に海のシルクロード文化
の大浪に勝てぬ(東進できぬ)まま現代に至る。

今度のアジア投資銀行が世界を驚かせたのは
チャイナ自身の雄大な構想によるのでなく、
イギリスが參加して歐洲先進國が雪崩を打ったが
ゆゑに過ぎない。チャイナ研究者を過大評價する
左翼と同じ誤りを、産經の北京支局も犯した。
どうも産經の北京支局はこの傾向が強いやうだ。
チャイナは小さなことを大きく見せるのが常套的
手法だ。乘せられてはいけない。
基本的にチャイナを分析しよう、理解しようとしたら
その時點で負けである。チャイナのやることは
徹頭徹尾無意味なのだ。日本はチャイナに對する
歐米の反應だけを仔細に觀察すべきである。
尖閣然り、アジア投資銀行然り。


以下は産經の原文である。
http://www.sankei.com/premium/news/150414/prm1504140007-n1.html
http://www.sankei.com/premium/news/150414/prm1504140007-n2.html
 2012年10月、北京で発表されたある論文が、中国の対外政策を研究する各国の専門家の間で、ひそかな注目を集めた。
 「西進、中国地政学の戦略リバランス」。筆者は北京大学国際戦略研究センターの王緝思主任だ。
 王氏は中国で米国研究の第一人者だが、中国の西、すなわち中央アジアや欧州をにらむ戦略研究は「畑違い」である。
 にもかかわらず論文は力作だった。歴史から説き起こして中国の経済、安保戦略に踏み込んだ。いわく、近代以降の中国が上海などから日本や欧米をにらむ「東進」に偏り過ぎたとして、古代のシルクロードを復活させる「西進」の必要性を指摘。ユーラシアに複数の「新シルクロード」を開くことのほか、協力発展基金の設立など資金支援の枠組みも提言していた。
 中国の米国専門家が「西」を向いたことへの戸惑いは、1年ほどたって今度は納得にかわった。
 中国の習近平国家主席が13年秋、「一帯一路」と呼ばれる新シルクロード経済圏構想を発表。アジアの開発資金をまかなうアジアインフラ投資銀行(AIIB)の設立もほぼ同時に提唱した。14年11月には400億ドルの「シルクロード基金」開設を発表、開発と資金の両輪がそろった。

王緝思原文「西進,中國地縁戰略的再平衡」
http://opinion.huanqiu.com/opinion_world/2012-10/3193760.html
http://haiwai.people.com.cn/BIG5/n/2012/1017/c232574-17595658.html

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王緝思(わうしふし、wangjisi)については時々西側媒體で
「チャイナの代表的論客にこんな人がゐる」
として取り上げられる程度で、論説も凡庸だ。
産經ともあらうものがわざわざ持ち上げて差し上げる必要は無い。
論説の執筆者は山本秀也といふ人。どうにも異樣だ。
http://ci.nii.ac.jp/search?author=%E5%B1%B1%E6%9C%AC%E7%A7%80%E4%B9%9F&publisher=%E5%B2%A9%E6%B3%A2

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