平27賀印刷

訓讀
時に感じ史を詠じ、天下太平を願ふ。
乾隆、武を耀かす、北西の疆。
洪武、征し難きは、海國つまびらかなり。
五族・琉球、等視するをやめよ。
界はるかなり、釣嶼、小東洋。

八重山2014年1108四面S



八重山日報 平成二十六年十一月八日 第四面
「世界史的大事件を鳩山氏に問ふ チャイナ線を突如三百キロ移動させるのか」
 鳩山由紀夫元首相が八重山で講演する。遠方ゆゑ聽講できないが、いつも鳩山氏に問ひ質したいと思ふことが有る。鳩山氏が信頼する孫崎享氏の語る尖閣前史(領有以前の歴史)は百八十度の虚構であり、虚構から出發して下關條約、カイロ宣言、ポツダム宣言、サンフランシスコ條約と、次々に虚構を重ねる。しかし鳩山氏はそれを信奉する。仕方ないので「かりに孫崎氏の尖閣史が全て誤りであれば、鳩山氏の尖閣主張は百八十度轉換しないのか」と問ひたい。
 現在、中華人民共和國の領土は大陸沿岸までである。大陸極近の金門島・馬祖島は中華民國の施政下即ちアメリカ勢力圏内に在る。歴史上でも五百年以上にわたり今と同じ沿岸線までであった。所謂「第一列島線」にチャイナ領土が及んだことは歴史上で一度も無く、尖閣最西端の魚釣島ですらチャイナ線外三百キロの地だ。その尖閣に今チャイナが地歩を得ると、チャイナ線は突如三百キロ東方に移動し、八重山極近に迫ることになる。こんな世界史的大轉換を鳩山氏は望むのか。
 孫崎氏がチャイナ主張から又引きする海防書『籌海圖編』(ちうかいづへん)に、西暦千五百六十一年の倭寇に對する海防範圍を遠く尖閣海域まで記録するといふのは虚構である。同書の中に大陸沿岸までの海防限界線が記録され、同時代史料多數にも同じく記録される。
 琉球國が半ばチャイナ統治下だったといふ俗説も誤りである。そもそも清國に朝貢した諸國は二大地域に分かれる。北と西のモンゴル・ロシア・ウイグル・チベット等は「藩部」(はんぶ)と規定され、その事務は「理藩院」(自治省)の管下であった。東と南の朝鮮・琉球・ベトナム・タイ・ビルマ等の朝貢國との外交は「禮部」(略字礼部、文部省)の管下に屬した。政治でなく文化の役所に屬したことが歴史を象徴してゐる。東と南の諸國は清國と文化面(及び附隨的貿易)で交際したに過ぎない。
 清國の前の明國でも、東と南の諸國は「不征の國」と規定された。明國清國は沿岸警備隊以外に水軍を有せず、これら諸國を征し得なかった。著名な鄭和艦隊もイスラム航海士に導かれたに過ぎない。尖閣も琉球の航海士に導かれて渡航した。史料に明示されてゐる。
 これら禮部管下の不征の朝貢國のうち、現在チャイナに併合された國が一つでも存在するか。存在しない。歴史的趨勢として、これら東と南の朝貢國はチャイナに屬しないのだ。上述の沿岸領土線が歴史を示してゐる。
 近代の下關條約の「附屬島嶼」に尖閣が含まれるか否かについても、孫崎氏は「含まれるといふ主張に一定の理が有る」と言ふ。しかし地理的に附屬か否かの議論は無効である。なぜなら領土線外の地は條約の對象とならない。附屬か否かを問はず、清國から日本に割讓する權限がそもそも無いのである。さればそれ以後のカイロ宣言などに絡める議論は全て無効である。鳩山氏は信じないだらうが、「かりに」無効ならば尖閣をどうすべきだと言ふのか。問ひ質したい。  
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ついでながら……
いしゐのぞむ著『尖閣反駁マニュアル百題』 集廣舍刊。
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