産經等の報道によれば、中華人民共和國は浙江省の「南麂列島」(なんきれっとう)に
軍事據點が整備されはじめたとのことだ。
南麂島は古くより、琉球から福建への航路で最初に見える「中華外山」
とされた島だ。南麂または南杞と書く。
例へば趙新「續琉球國志略」卷二、道光十八年十月十八日に曰く、
「辰刻見中華外山。未刻見南杞山。」
(辰刻に中華外山を見る。未刻に南杞山を見る)
と。これは中華(ここではチャイナ)の外縁の島とも讀み得るし、
中華の境外の島とも讀み得る。この中華外山は南麂列島の最東端の島か、
もしくは南麂島の北側の島だらう。いづれにしろ南麂の附近でチャイナは終る。
尖閣はそこから遙かに三百キロメートルの彼方だ。

また例へば西暦千七百八年、琉球國の程順則「指南廣義」に曰く、
「古米山開舟、東北風、用單戌針、十更﹑又辛戌針、五更﹑
又單辛針、五更﹑又單酉針、十更、見水色渾白、
遠看有山、又用庚酉針、認是南杞。」
(古米山(久米島)より開舟す、東北風なれば單戌針を用ゐること十更﹑
また辛戌針にて五更﹑また單辛針にて五更﹑また單酉針にて十更、
水色の渾白せるを見て、遠く看れば山有り、また庚酉針を用ゐ、是れ南杞なりと認む)
と。久米島から南杞山までの間の東支那海には島が無く、
南杞に到達して始めてチャイナである。

林子平「三國通覽圖説」では、南杞が釣魚臺よりも東方に位置する。
http://archive.wul.waseda.ac.jp/kosho/ru03/ru03_01547/ru03_01547_0004/ru03_01547_0004_p0005.jpg
南杞林子平
實際の南麂島は尖閣の遙か西方だから、林子平は「釣魚臺」を
正確に尖閣として認識してゐなかったことを示す。
これについて私は論文執筆中だ。參考リンク:
http://www.shukousha.com/information/news/3172/

現代では國共戰の昭和三十年まで國民黨が南麂島を守ってゐたが、
最後に放棄した。明國清國から一貫してチャイナの最前線である。
最前線が尖閣の西方300kmだから、
尖閣がチャイナの外に在ったことを示す歴史的な島なのだ。
明國以來、チャイナの海防限界線は、大陸沿岸島嶼を越えることが無かった。
現代でも大陸沿岸の金門・馬祖は臺灣の領土であり、
とりも直さずアメリカ勢力圏である。
一方の南麂は中華人民共和國の領土である。
沿岸島嶼がチャイナと外國との最前線であること、歴史でも現代でも同じだ。
尖閣にも第一列島線にもチャイナ海防力が到達したことは一度も無い。


以下、12月22日産經報道:
http://www.sankei.com/world/news/141222/wor1412220004-n1.html
「中国、尖閣近海に軍事拠点整備 レーダー設置、滑走路も…日米との有事想定」
 中国軍が東シナ海の沖縄県・尖閣諸島から約300キロ北西にある浙江省・南麂列島で、軍事拠点の整備に着手したことが21日、分かった。複数の中国筋が明らかにした。最新鋭のレーダーを既に設置、ヘリポートを整備中で、軍用機の滑走路建設計画も浮上している。
 日米との有事を想定して危機対応能力を高めると同時に、東シナ海上空に設定した防空識別圏の監視を強化する狙いとみられる。南麂列島は自衛隊や米軍の基地がある沖縄本島よりも尖閣に約100キロ近く、尖閣防衛に向けた日米安全保障戦略に影響を与えそうだ。
 海洋生物が多様なことから南麂列島は国連教育科学文化機関(ユネスコ)の生物圏保存地域「エコパーク」に登録された自然保護区で、軍事利用推進の妥当性をめぐり議論を呼ぶ可能性がある。
 南麂列島の関係者や軍事情報に詳しい関係筋によると、大小52の島からなる同列島で最大の南麂島には今年秋、軍事拠点整備のため、数百人の軍関係者が上陸。軍が利用するための超高速インターネット通信網の敷設も始まったという。(共同)