APEC尖閣喪失危機――愛國派の議員は疑惑を追究せよ  
               八重山日報寄稿 平成二十六年十月三十日第五面

 十月十六日、毎日新聞が第一面上段左方を大きく使って怖ろしい話を報じた。安倍内閣が北京側と時間をかけて尖閣について話し合って行くことを、十一月十日の北京APECで表明する見込みだと言ふ。週刊朝日(十月三十一日號)も類似の動向を報じた。 
 私としては朝日・毎日の嘘だと信じたいが、嘘か否かでなく、これは一大疑惑だ。安倍首相は今、自民黨左派や財界やアメリカの意向及び漁船の横行などに勝てず、歴史上で初めて尖閣放棄を決める瀬戸際のやうに見える。首相自身が惡いのか、誰が惡いのか、分析する必要は無い。誰が惡くても、放棄してしまったら結果は同じである。殘された時間は少ない。愛國派の議員は國會でこの疑惑を追究して欲しい。
 なぜ「放棄」と認定できるのか。尖閣について「話し合ふ」以上は國際紛爭地となり、憲法第九條で「國際紛爭を解決する手段としては」武力を放棄する規定に基づき、チャイナ軍に尖閣を攻撃されても日本は反撃できない。日本政府自身がそのやうに憲法を解釋せずとも、左翼議員や財界やアメリカ輿論が、憲法にもとづき武力行使するなと壓力(あつりょく)をかけるだらう。公務員常駐の公約すら守らぬ安倍政權が、巨大な壓力に抗して尖閣を防衞できるはずが無い。事實上、日本は尖閣を喪失する。
 毎日新聞が報じる前から、谷垣・二階・福田諸氏が北京に詣でたり、北京寄りの發言を繰り返し、APECで安倍首相と習近平主席とを面談させようと懸命である。愛國派の麻生大臣までもが北京で「立ち話」外交をする。最も急進的な二階氏は尖閣棚上げで合意せよと公開で主張する。更にはチャイナ漁船の群れが小笠原諸島で貴重な珊瑚を根こそぎ捕獲する。海上保安廳は尖閣と小笠原と二面警備に能力の限界を超えつつある。
 そもそも安倍政權がふらついてゐる原因は、尖閣の歴史について日本が不利だとの誤解に在る。チャイナ側は日本が歴史の議論から逃げるかの如き印象づけを目的とする。日本は歴史から逃げれば世界の支持を得られない。
 しかし尖閣の最古の史料の「釣魚嶼」は、琉球人が針路を案内した記録であり、命名者は琉球人と推測される。尖閣の東方には琉球の國境線が記録され、そこが明國・清國との間の國境線だったと現チャイナは主張するが、尖閣の遙か西方の大陸沿岸には明國・清國自身の國境線が存在したことを無視した嘘の議論である。ここ二年來、八重山日報で報じて下さった諸史料に史實が示されてゐる。歴史は五分五分ではなく、日本が百でチャイナがゼロなのだと分かってきた。
 現チャイナ施政下の領土も、はるか西方の大陸沿岸までに過ぎない。チャイナが尖閣を手に入れると、國境線が突然東方に三百キロメートルも移動することになる。二千年來の大陸王權史上で初の事態である。約一週間後に迫ったAPECで歴史の大轉換をゆるしてはならない。
(原文は有料の新聞オンラインよりご覽下さい。)
http://www.shimbun-online.com/product/yaeyamanippo0141030.html
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毎日261016尖閣S