冷泉彰彦といふ評論家が四年前に虚妄の説をニューズウィーク誌で書いてゐる。
http://www.newsweekjapan.jp/reizei/2010/09/post-202.php
尖閣で問われているのは、歴史認識ではないのか?
2010年09月27日(月)11時53分  冷泉彰彦
「第一、第二」という発想法の背後にある覇権主義は、100年以上前のアジアで日本の山縣有朋の主張した「主権線、利益線」という二段階防衛論の焼き直しであると言えます。ならば、この「第一列島線、第二列島線」という発想そのものを外交で徹底的に否定するためには、後に日清日露という形で東アジアを動乱に導いた山縣の「主権線、利益線」という思想をも徹底的に否定しなくてはならないはずです。中国は敵だから、敵の拡大政策には反対するが、自国の過去の拡大政策は生存のためだったというロジックでは、国際社会には通用しないでしょう。

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 以上が冷泉氏の説だが、完全に誤ってゐる。山縣有朋の「主權線」は即ち實効統治してゐる領土線である。山縣は主權線を「守禦」「退守」すべきもの定義として、日本の主權線は對馬に在りと述べてゐる。利益線は國外の權益の線であり、領土線の外に在る。
 山縣の論はチャイナの第一第二列島線と全然異なる。所謂第一列島線とは、平成四年に「領海法」を以て規定され、尖閣・臺灣・東沙・西沙・中沙・南沙を全て含む線である。領土外を領土と規定する狂妄の法であり、奪取目標線と呼び換へて良い。歴史上の尖閣が一貫してチャイナ領土外であったことは新刊拙著『尖閣反駁マニュアル百題』
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をご覽頂けば明白である。第二列島線とは、奪取目標線の遙かに外側の利益線であり、チャイナは公式には第二列島線進出計劃の存在を否定してゐる。
 當時の日本政府は利益線を領土に編入せよとして立法したわけではない。現チャイナは山縣をも遙かに超える侵奪意圖をそのまま領海法として立法した。山縣の所謂主權線は、チャイナにあてはめれば浙江・福建・廣東の沿岸島嶼までに過ぎない。大陸極近の金門島・馬祖島はチャイナ領土外に在る。
 第二列島線も山縣と異なる。山縣の利益線は朝鮮半島までだが、第二列島線は遙かに廣がってゐる。以下に表にまとめて置かう。

チャイナ領土線(浙江・福建・廣東沿岸)=山縣主權線(對馬など)。
第一列島線(尖閣・臺灣・東沙・西沙・中沙・南沙) → 虚構の領土、山縣は唱へず。
第二列島線(小笠原・グアム・ニューギニア)=擴大山縣利益線。

實の處、冷泉氏は單にチャイナを持ち上げて日本政府を非難したいだけではないのか。だからこんなトンデモな理屈を平氣で書くのだらう。日本を非難さへすれば正義の側に立てるといふ風潮に乘ってゐるだけだ。
newsweek尖閣

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「山縣有朋意見書」
国家独立自衛の道二つあり。一に日く主権線を守禦し他人の侵害を容れず、二に日く利益線を防護す自己の形勝を失はず。何をか主権線と謂ふ、彊土是なり。何をか利益線と謂ふ、隣国接触の勢我が主権線の安危と緊しく相関係するの区域是なり。……我が対馬諸島の主権線は頭上に刃を掛くるの勢を被らんとす。
http://chushingura.biz/p_nihonsi/siryo/0951_1000/0990.htm

「中華人民共和國領海及毘連區法」
中華人民共和國的陸地領土包括中華人民共和國大陸及其沿海島嶼、台灣及其包括釣魚島在内的附屬各島、澎湖列島、東沙群島、西沙群島、中沙群島、南沙群島以及其他一切屬於中華人民共和國的島嶼。
http://baike.baidu.com/view/250487.htm