麻生二千年

元文部省職員前川喜平氏がツイッターで中々良いことを言ってゐる。  

https://twitter.com/brahmslover/status/1216890445801738240
  「2千年の長きに渡って一つの民族、一つの王朝が続いている国はここしかない」と麻生太郎氏発言。アイヌは先住民族だ。国連では琉球人も先住民族とされる。在日コリアンもたくさんいる。2千年前の弥生時代に王朝は無かった。麻生発言は事実に反する誤った観念に基づく。それは「國體観念」だ。

これにつき鄙見。

【1】在日コリアンとは、通常は日本人でなく未歸化の人々を指すから、日本といふ「王朝」を構成してゐない。これを日本王朝の内に含めるのは、國家の範疇は絶對ではないとの思想であらう。これは大切な點。

【2】國聯の先住民族の定義を左翼は絶對視してゐるが、ウィキペディアにほぼ曰く、
「独立国における種族民で、その社会的、文化的及び経済的状態によりその国の共同社会の他の部類の者と区別され、かつ、その地位が、自己の慣習若しくは伝統により又は特別の法令によって全部又は一部規制されているもの。」
「独立国における人民で、征服、植民又は現在の国境の確立の時に当該国又は当該国が地理的に属する地域に居住していた住民の子孫であるため原住民とみなされ、かつ、法律上の地位のいかんを問わず、自己の社会的、経済的、文化的及び政治的制度の一部又は全部を保持しているもの」
「原住又は種族であるという自己認識は、この条約を適用する集団を決定する基本的な基準とみなされる。」

と。この定義にもとづけば、日本が占領を經て昭和二十七年に國境を確定した時點が一つの基準となり、それ以前から居住する在日朝鮮人は先住民となり得る。前川氏はほぼこのやうな思想であらう。

【3】近世に來航した長崎唐人も、この基準では「先住」民族となる。實際は先住ではないが、民族であることは確かだらう。一方で琉球人は一般的に先住民族として自己認識してゐないので、前川氏が勝手に國聯某部會の「琉球民族」なる妄言をあてはめてゐるに過ぎない。

【4】江戸時代の諸藩の藩民は脱藩を禁止され、且つ士族と農工商とは區別されてゐるから、それぞれ先住民である。

【5】彌生時代に王朝が存在したことは「未證明」であって、存在しなかったと證明されたわけではない。ほぼ卑彌呼の時代から古墳が出現して古墳時代と呼ばれるが、それは王朝の有無の證明にもとづく時代區分ではなく、ほぼ墓制などの政治文化的樣相にもとづいてゐるに過ぎない。

【6】神武東征傳説にもとづけば、橿原即位以前に九州王朝が存在したのであり、上記のやうに國家の範疇は絶對ではないのだから、橿原即位以前が國家を構成してゐなかったとは言へないし、橿原即位後も國境はすぐに確定してゐないので、大和朝廷は國家だったか否かも怪しい。麻生太郎氏はそのやうな小賢しい定義を前提とするのでなく、日本の政治的民族的單一の總體を言ってゐると解すべきである。

【7】日本の政治的文化的總體は麻生氏の言ふやうに二千年前に成立したのでなく、教科書通りに一萬數千前に繩文領域として成立したとするのが正しい。この點で麻生氏は甘い。

【8】繩文人には西日本繩文人と東日本繩文人との二種があった可能性が、
http://senkaku.blog.jp/2019122981854824.html
 遺傳子研究により高まってゐる。しかし考古學的にこの二種は一つの綜合的繩文文化として融合してゐたやうである。今後の研究が待たれるが、現時點で麻生發言は誤ってゐない。そしてこの二種は日本固有種として日本の父系Y染色體の七割を占める。のこる三割は日本の中の政治的單位なり民族的單位なりとして王朝の一部分を構成してゐたわけではなく、外來者=歸化人として次第に七割の中に融合してしまった。

【9】アイヌ人は繩文人に後から融合したので、上記の通り近代基準によってのみ先住民とされてゐるに過ぎない。「民族」であることは確かだが、麻生氏は日本が一つだけの民族だったと言ってゐるのでなく、日本といふ一民族が永續してゐると言ってゐる。アイヌ民族の存在を否定せず、しかしアイヌ以前から二千年の日本といふ點で、アイヌの「先住性」を否定してゐる。

結論。麻生氏は綜合的にほぼ正しく、文部省前職員は麻生氏の正しさを突出させることに貢獻した。
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