玳瑁。
玳瑁龜説川口鼈甲店


長崎の鼈甲。玳瑁(たいまい)。
今日の大學院の授業で李時珍の「本草綱目」の玳瑁を
取り上げたが、北宋・蘇頌を引いて「必自搖動」
としてゐるのが不可解であった。
そこで蘇頌「本草圖經」(逸書)の逸文を見ると
「帶びる」云々とあるので理解できた。
玳瑁甲を攜帶してゐれば、毒に出逢ったときに振動して
警報してくれるのである。但し屍で得たものや
煮込んで形を整へて器にしたものは靈驗なし。
「本草綱目」では「帶びる」云々が脱落してゐる。
古書にはかういった事がままある。來週の授業で補はう。

以下、北宋・蘇頌「本草圖經」の逸文二則。

明・劉文泰 「本草品彙精要」卷二十九、蟲魚部・瑇瑁:
「圖經曰、生嶺南山水間、今亦出廣南、蓋龜類也。
惟腹背甲皆有紅點斑文。
其大者如盤、身似龜、首嘴如鸚鵡者是也。
入藥須生者爲靈、帶之亦可以辟蠱毒。
凡遇飲食有毒、則必自搖動。
其自死及煮拍爲器者則不能。神矣。」
(故宮珍本叢刊、海南出版社、第370冊、康熙四十年進呈鈔本)
http://kanji.zinbun.kyoto-u.ac.jp/kanseki?record=data/FA019705/taggedKokyu/0720005.dat
嶺南の山水の間に生ず、今は亦た廣南に出づ、蓋し龜の類なり。
ただ腹背の甲、皆な紅點の斑文あり。
その大なる者は盤の如し。身は龜に似て、
首と嘴とは鸚鵡の如き者これなり。
藥に入るに須らく生ける者を靈となす、
これを帶びれば亦た以て蠱毒を辟すべし。
凡そ飲食に毒あるに遇へば、則ち必ず自ら搖動す。
その自死せる及び煮拍して器となせる者は則ちあたはず。神なり。
故宮珍本叢刊370本草品彙精要玳瑁

劉文泰 「本草品彙精要」について、ことばんく。
https://kotobank.jp/word/-1593053


真柳誠「中国本草と日本の受容 」
『日本版 中国本草図録』巻9、218-229頁、東京・中央公論社、1993年8月
 明代は多様な本草書が著された。そのうち劉文泰らの『本草品彙精要』(1505)と、
李時珍の『本草綱目』(1590)が最も代表的である。
『本草品彙精要』は宋以後で初の勅撰本草であるが、
採色図があるため明清代では刊行に至らず、
中華民国になって初めて絵図ぬきで活字印刷された。
http://square.umin.ac.jp/mayanagi/paper01/honzojuyo.html


宋・唐慎微「證類本草」卷二十「蟲魚部・上品」四庫全書本。
宋・唐慎微「證類本草」卷二十「蟲魚部・上品」四庫全書本。
「圖經曰、瑇瑁生嶺南山水間。今亦出廣南。蓋龜類也。
惟氣背甲皆有紅㸃斑文。其大者有如盤。
入藥須生者乃靈、帶之亦可以辟蠱毒。
凡遇飲食有毒、則必自搖動。死者則不能。神矣。」

圖經に曰く、瑇瑁は嶺南の山水の間に生ず。
今は亦た廣南に出づ。蓋し龜の類なり。
ただ氣(腹)背の甲、皆な紅㸃の斑文あり。
其の大なる者は盤の如き有り。
藥に入るるに須らく生ける者にして乃ち靈なり。
これを帶びれば亦た以て蠱毒を辟すべし、
凡そ飲食に毒あるに遇へば、則ち必ず自ら搖動す。
死せる者は則ちあたはず。神なり。

關聯:
「龜筒」。


小野蘭山「本草綱目啓蒙」玳瑁。