葡萄の美酒、夜光の杯。飲まんと欲すれば琵琶、馬上に催す。

古來、葡萄も琵琶も、西の文明が東漸した象徴の一つである。
漢の張騫は西方へ出使し、樣々な文明を學んだ。
東洋は教へを受ける側であった。
漢乃至更に古くから、所謂シルクロードは西の文明を東に運んだ。
「一帶一路」の政治宣傳では、
あたかも東風が西風を壓倒してゐたかの如き
https://www.bbc.com/zhongwen/trad/chinese-news-41164655
逆方向の嘘の歴史を唱へてゐる。

今、葡萄酒の出土により、その嘘がまた一つあばかれた。
漢の時代、既にチャイナは西方大文明の
影響下の小文明に過ぎなかったことが、
今度の葡萄酒の發見からも分かる(下方にニュース轉載)。
勿論、葡萄は西の植物であり、葡萄紋、葡萄栽培術、葡萄酒釀造、
など全て西の文化である。

古代の文物は、どこが起源なのか分からないものが多い。
分からない場合にそれをチャイナ獨自の文化だと
宣傳するのが彼らの勝手な理屈だ。
しかし例へば兵馬俑の馬車はあまりにも希臘に似てをり、
西方文明の影響を濃厚に感じさせる。
葡萄酒の出土により、漢代の紙の製造も
西方のパピルスから改良されたと推測するのが
ますます確實性を帶びる。

チャイナ四大(しだい)發明の一つが紙だといふのは眞っ赤な嘘である。
前漢時代の現存最古の紙は、甘肅・ウイグル・陝西など
全て現チャイナ統治域の西部から出土してゐる。
紙の技術がシルクロードを通じてチャイナに
持ち込まれたことはほぼ確實であらう。紙の詳細リンク。

ラテン語のPapyrusはそのまま英語のPaperであり、
名稱が變はってゐない。新たな名稱が生まれるほどの
革命的進歩があったわけではないことが分かる。
パピルスの悠久の歴史の中のひとこまが、紙であるに過ぎない。

發明といふならば、最大の筆記革命はパピルス製造法の發明だらう。
それ以前は粘土板、牛骨、金石、木簡、竹簡、布などが
書寫媒體であった。そこから全く異なる概念に飛躍したのが
パピルスであり、紙はその影響下の改良の一種に過ぎない。


『史記』大宛列傳。張騫のもたらした葡萄栽培術。
「宛左右以蒲陶為酒、富人藏酒至萬餘石、久者數十歳不敗。
俗嗜酒、馬嗜苜蓿、漢使取其實來。
於是天子始種苜蓿・蒲陶肥饒地。
及天馬多、外國使來衆、則離宮別觀旁、盡種蒲萄・苜蓿極望。
自大宛以西至安息、國雖頗異言、然大同、俗相知言。」
宛の左右(東西)に蒲陶を以て酒と為す、富人の酒を藏すること
萬餘石に至り、久しきは數十歳も敗れず。
俗に酒を嗜み、馬は苜蓿を嗜む、漢使、其の實を取りて來たる。
ここに於て天子始めて苜蓿・蒲陶を肥饒の地に種(う)う。
天馬の多かりて、外國使の來ること衆きに及びて、
則ち離宮別觀の旁ら、盡く蒲萄・苜蓿を種うること望を極む。
大宛より以西、安息に至るまで、國頗る異言と雖も、
然れども大同なり、俗相ひ言を知る。

 「俗相知言」とはヘレニズムの地で希臘語が通用したことを指す。
葡萄の栽培がヘレニズムから漢土に齎されたことがよく分かる。
ヘレニズム地域の人々が酒を嗜むので、漢を訪れる外國使節が増加すると
漢の宮廷周邊で葡萄を栽培した、といふ文意である。
使節を葡萄酒でもてなすために栽培法を學んだのである。
今の日本政府が高貴な外國使節をフランス料理でもてなすのと同じだ。
國際標準を受容した、大文明の下の小文明となった、に外ならない。

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真のビンテージ? 中国で2000年前のワイン見つかる
2018年11月7日 17:30 発信地:北京/中国 [ 中国 中国・台湾 ]
http://www.afpbb.com/articles/-/3196552
【11月7日 AFP】中国・河南(Henan)省で、およそ2000年前のものとみられるワインが入った青銅製のつぼが発掘された。つぼは封がされた状態で墓に埋められていた。
 国営新華社(Xinhua)通信の報道によると、つぼに入っていた約3.5リットルの黄色がかった液体を注ぐと中国ワインの強烈な香りがしたという。
 どのように封をして蒸発を防いでいたのかについては詳しく報じられていないものの、ワインは前漢時代(紀元前202~西暦8年)のものとみられている。
 新華社によると、中国ではコメやモロコシといった原料から造られた前漢時代の酒が他にも見つかっている。酒は精巧な青銅製の入れ物に保存され、儀式などにおいて大きな役割を果たしていたという。
 また有名な兵馬俑(へいばよう、Terracotta Warriors)がある西安(Xian)では2010年、空港の拡張工事に伴う墓の発掘で2400年前のスープが入ったつぼが見つかっている。(c)AFP

漢代葡萄酒

http://archive.is/GyAIP

https://web.archive.org/web/20181118201459/http://senkaku.blog.jp/2018110778099753.html