おうしう           だっさい ろく  
歐洲史料 尖閣獺祭録 第七十七囘 (部分)
『八重山日報』連載、平成二十八年十月十八日、第五面(新聞オンライン)。
http://www.shimbun-online.com/latest/yaeyamanippo.html
以下に部分轉載。

「釣魚臺」は日本名である 最古のローマ字は日本漢字音だった  ~~ 西暦千八百三十二年 クラプロート譯『三國通覽圖説』(フランス)

 林子平『三國通覽圖説』附録琉球圖のクラプロート氏フランス語譯本(やくほん)からの複製が圖178である。圖179に對照表を作った。
圖178_Sankokftsouran國會藏コピー尖閣切
圖178 クラプロート譯(Julius von Klaproth)、『三國通覽圖説』琉球圖より(San kokf tsou ran to sets)。西暦千八百三十二年刊。國會圖書館藏。

 釣魚臺の「Tsioghiotai」は、今の羅馬(ローマ)字に轉記(てんき)すればChogyoーtaiに相當(さうたう、今音そうとう)する。日本漢字音である。私はこれまで西暦千八百七十一年に衞三畏(サムエル・ウィリアムズ)が記したチャイナ字音「Tiaoyuーtai」が最も早いかと思ってゐたが(連載第三十囘)、クラプロートの日本字音が先であった。
 クラプロートは現チャイナの「Diaoyuーdao」よりも約百四十年早い。しかし今日歐米では、新參者のDiaoyuーdaoが流布してしまってゐる。漢文名の「釣魚島」(てうぎょたう、今音ちょうぎょとう)を日本人自身が近年避けて來た結果である。
 漢文名としては釣魚「嶼」(しょ)に琉球人が陳侃を案内した記録が最古、ついで釣魚「臺」(だい)が最も早く出現するのは琉球人程順則の漢文であり、そして現在チャイナが使ふ釣魚「島」(たう)は明治日本人が創始した。全部日本人の命名した漢文である。
圖179_klaproth三國通覽對照表
   圖179 島名對照表

 現在新聞などでは釣魚島を「中國名」としてゐる。日本人が創始したのに何故日本人が自らチャイナ名とするのか。笑止千萬である。正しくは「古名釣魚嶼・釣魚臺」もしくは「別名釣魚島」とせねばならない。チャイナ名はそもそも存在しない。政府が指針を作成してメディアに求めるべきだ。
 クラプロートはまた黄尾山(黄尾嶼)及び赤尾山(赤尾嶼)を日本漢字音で記録する。現在米軍射爆撃場がKobisho及びSekibishoと呼ばれるのは、クラプロート以來の歴史ある日本漢字音である。ところが保守系議員が「黄尾嶼・赤尾嶼はチャイナ名だから廢止(はいし)せよ」などと國會で主張してゐる。淺慮(せんりょ)も甚だしい。
 クラプロート以前、歐洲では西暦千七百五十一年に宣教師ゴービルが創始した「Tiaoーyuーsu」が既に流布してゐた。チャイナ北方漢字音である。德川時代の日本は鎖國してゐたため、歐洲では琉球情報が乏しく、朝貢先の北京で宣教師が得た琉球情報をフランスに書き送ったため、チャイナ漢字音で歐洲に流布した(連載第二囘)。鎖國ゆゑに日本は情報戰で負けたのである。
 しかし尖閣だけではなく、琉球全土の地名がチャイナ字音で歐洲に流布した。これは逆に日本の鎖國統治が琉球全土に貫徹してゐたことを示してゐる。尖閣だけではないのだから、チャイナ漢字音は尖閣領有を示すものではない。
 クラプロートもまた尖閣だけでなく、チャイナ地名にまで日本漢字音を採用した。臺灣(たいわん)最北端の鷄籠山は「けいろうさん」、福州近郊の梅花所は「ばいくゎしょ」といった具合である。日本の領土と示すためではない。ゴービルもクラプロートも、漢字音で尖閣領有を示す意圖は無かった。
 さうは言っても、日本の漢文名「釣魚島」がチャイナ字音で世界に流布するのは有り難くない。我々はクラプロートのTsioーghioーtaiと同じく日本漢字音に屬(ぞく)する「Chogyoーto」(連載第七十一囘)を英語で大いにひろめるべきだ。
 日本人がDiaoyuーdaoを使ふならば、それは東京をTokyoと書かずにチャイナ字音で「Dongjing」と書くに等しい。東京驛(えき)の驛名板にDongjingと書いてあったり、東京五輪をDongjing五輪と標記して良いものか。
 羅馬字でなく漢字音そのものは、チャイナ語を話す時にDongjingと讀(よ)むし、香港語ではTongkingと讀む。地域の字音で讀むのが漢字の特性だ。ただそれを漢字以外の言語で流布させるのは、情報戰としての効果を持ってしまふ。
 「琉球」もまた漢文であってチャイナ語ではない。それを日本人が使はずにゐると、日本字音RyuーkyuやLooーchooでなく、チャイナ字音Liuーqiuが世界に普及してしまふだらう。釣魚島と同じ運命だ。

全文は、『八重山日報』連載、平成二十八年十月二十五日、第五面、新聞オンライン。
http://www.shimbun-online.com/latest/yaeyamanippo.html
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