夕刊フジ電子版、富坂聰氏論説(下方に節録)。とんでもない。
http://www.zakzak.co.jp/society/foreign/news/20160824/frn1608241140001-n1.htm
http://www.zakzak.co.jp/society/foreign/news/20160824/frn1608241140001-n2.htm

まづは私の反駁。
1、南支那海判決が沖ノ鳥島に不利になった。
 これは周知のことで、判決が太平島を岩礁扱ひしたのは何故なのか、訝る向きも多い。これについては私が臺灣で既に書いた。リンク:
(仲裁庭不反駁元國測緯之説,却罵「中國的臺灣當局」。風傳媒)
http://www.storm.mg/article/144427
要するに、太平島だけ大きいからと經濟水域を認めてしまったら、南沙海域が全て臺灣のものになってしまひ、現状が大きく變更される。仲裁裁判所としてはそんなことはできないので、「人工的に島の形状が變へられてゐる」などの道理を附會して、南沙全島一律に岩礁としたのだ。現實として、それ以外に判決の下しやうが無かった。沖ノ鳥島を始めとして、全世界の無人島の主權に惡影響は有るが、やむを得なかったのである。
 今後どうするか、世界各國が智慧を出すべきである。日本は沖ノ鳥島が不利だからと南沙で軟化するのは絶對有ってはならぬ選擇だ。富坂氏は要するに日本は南沙仲裁判決を全面支持するな、チャイナを少しばかり支持しておけといふ主張だ。とんでもない。

2、ロシアが尖閣に介入する。
 これは不可。何故なら尖閣は100%日本の領土であるからだ。南沙に諸國が介入するのは善。何故ならチャイナの領土ではないからだ。つまり根本的問題である。尖閣は確かに100%日本なのか否か。單に日本がさう言ひ張ってゐるだけなのか。富坂氏はその根本を等閑に付してゐる。何の理屈にもならない。
 チャイナの尖閣主張は全て歴史だけだ。明治二十八年編入の時點でチャイナのものだったといふ前提だ。我々は明治二十八年より以後について論爭しても何の役にも立たない。尖閣は要するに歴史の虚構と五百年の史實との爭ひなのだ。100%日本編入に向かって進んだ素晴らしい歴史を、わざわざ自分から無視する日本では、とても勝てない。
 100%の歴史が明らかになれば、ロシアの介入は100%惡であり、富坂氏の議論は1%の意義も持たない。富坂氏の前提は、南沙も尖閣も同じく係爭地だといふ認識だ。この人は孫崎氏の同類である。

3、大陸棚延伸論。
 國際法の話なので、詳しくは私には分からない。ただ富坂氏が誤魔化してゐるのは、大陸棚が領土を定めるのではないといふ點だ。大陸棚の上の島嶼を全て大陸國の領土とするわけではない。大陸棚を論ずる以前に、尖閣は日本の領土であるから、大陸棚の上に日本の領土が存在する。それだけのことだ。
 越南が大陸棚の上の島嶼が自然とそのまま全て越南領土になると主張してゐるのだらうか。そんなことは聞いたこともないし、かりに越南がさう主張しても日本が支持する筈も無い。越南が主張するのは大陸棚即領土といふことではなく、大陸棚の海洋的權利だらう。
 富坂氏は、尖閣が日本の領土と確定してゐないといふ前提で、大陸棚の延伸を持ち出してゐる。そもそも尖閣は日本の領土なのか否か、そこを誤魔化さずに論ずべきだ。富坂氏の文章は輿論を誘導しようといふ惡意がある。

4、西沙について。
 富坂氏は西沙と南沙とを故意に混同してゐる。これはチャイナの主張と全く同じだ。西沙は古典漢文史料の中では、越南とチャイナとの中間的な地、兩文化の末端の地であった。しかし現チャイナはそこを誤魔化して、
「西沙にチャイナの力が及んでゐたから全南支那海がチャイナのものだ」
と主張してゐる。
 しかし今度の仲裁判決などで問題が大きくなってゐるのは南沙だ。日本が反チャイナ陣營を支持してゐるのも南沙問題だ。西沙と故意に混同する富坂氏は、何を目的としてゐるのか。

5、後出し先出しについて。
 富坂氏は南沙主張に於いてチャイナが先、東南アジア諸國が後だと言ふが、何にもとづいてゐるのか。古典史料で言へば、南沙でチャイナはゼロだ。全て虚構だ。リンク:
http://senkaku.blog.jp/2016070963121024.html
http://senkaku.blog.jp/2016070362768480.html
http://opinion.cw.com.tw/blog/profile/52/article/4458
http://senkaku.blog.jp/2016040257697412.html
http://www.peoplenews.tw/news/e226b0f0-698c-48c7-b914-17da65230fe4
http://senkaku.blog.jp/2016032257037201.html

 現代について私は一知半解ながら、南沙占領は中華人民共和國が最も遲い。遲かったがゆゑに、問題化を圖って主張したのは中華人民共和國が最も早い。それをどう尖閣にあてはめるのか。
 「尖閣は領土として確定した後にチャイナが主張し始めた」
 「南沙は他國の占領後にチャイナが最も早く主張し始めた」
この兩者を同列に扱ふ富坂氏は、矢張り尖閣主權が不確定といふ前提だ。不確定なのか確定してゐるのか、前提を誤魔化してはいけない。この人物は全く信頼できない。

 附記:チャイナが先に主張し始めたとは何のことかと思ったら、このビデオの6分50秒から。
https://www.youtube.com/watch?v=WJWI5Y0n768#t=6m45s
https://www.youtube.com/watch?v=WAvUpVxa5SM#t=6m45s
西暦1946年にチャイナが主張し始めたが、その時は越南は南北に割れてゐて、フィリピンは獨立してゐないからチャイナが最初だ、とのことだ。ちょっと待ちたまへ。その時は中華人民共和國はまだ建國してゐない。中華民國を算入するならば、越南がフランス殖民地だった時代の占領も算入せねばいけない。フィリピンの主張は西暦1952年サンフランシスコ條約で放棄された無主地だといふことだから、1952年以前に沈黙してゐたフィリピンも主張を開始してゐたに等しいから、同じく算入せねばなるまい。
 更に、ビデオの8分から。南沙で飛行場を建設してゐる五箇國の内、チャイナは四番目に建設したから、決してチャイナだけが惡いのではないとこれは現チャイナの主張をそのまま代辯してゐるが、それよりもちょっと待ちたまへ。富坂氏はチャイナが先だと言ひたいのではなかったのか。チャイナによる實効統治的進出は四番目に過ぎないではないか。論理を誤魔化さないで欲しい。


以下、富坂聰氏論説より節録。
http://www.zakzak.co.jp/society/foreign/news/20160824/frn1608241140001-n1.htm
http://www.zakzak.co.jp/society/foreign/news/20160824/frn1608241140001-n2.htm

【真・人民日報】南シナ海問題「敵の敵は味方」の単純な考え方は通用しない
2016.08.24
 フィリピンによるPCAの提訴の裁定が、めぐりめぐって日本の沖ノ鳥島の問題にも波及し、日本自身が膨大な海の権利を失いかねないことになったという問題が指摘されよう。
……もしロシアが「わが国にとって重要な輸送路だから」という理由で尖閣諸島の問題に介入しようとしたら、日本はその動きを仕方のないものだと受け入れるだろうか。
……西沙諸島(同・パラセル諸島)をめぐる中越の対立でベトナムが領有の根拠としているのは、「大陸棚延伸論」である。ベトナムに理があるなら、東シナ海で中国が主張する「(大陸棚の続く)沖縄トラフまでが中国のもの」が通ってしまうことにもなりかねない。
 また、「中国VSASEAN(東南アジア諸国連合)」の戦いでは、どうしてもASEAN側の主張が遅れたという背景がある。これも、日中の対立に当てはめれば、中国側の立場を後押しすることになる。
  現状を見る限り、日本は南シナ海の問題で明確にASEAN側に立っている。一方で、彼らが主張する「大陸棚延伸論」や「後出しジャンケン」については牽制する気配がない。東シナ海をめぐる日中間の衝突で、中国が同じ主張や手法を採用した場合、日本が不利にもなりかねないにもかかわらず、だ。


富坂聰