天皇陛下御退位の議論が始まるとともに、女系天皇推進論が再びマスコミに出てゐる。私は男系を守るべきだと考へる。皇室典範には單に「皇位は男子が繼承する」と書いてあるだけでなく、
「皇位は、皇統に屬する男系の男子が、これを繼承する」(昭和令)
「皇位ハ祖宗ノ皇統ニシテ男系ノ男子之ヲ繼承ス」(明治令)
と書いてある。「男系」とわざわざ書き入れた目的は何か。明治初期に盛んであった新儒教(宋明中華思想)にもとづくと勘違ひされてゐるかも知れないが、それは違ふ。新儒教の漢文に男系といふ語は存在せず、男系は明治の造語である。古典漢文では内戚と呼ぶ。外戚に相對する語である。外戚が存在しなければただの皇戚・皇親だったのであり、外戚が存在するがゆゑに内戚といふ語も産まれた。
 新儒教の特徴は、中華思想ゆゑに忠よりも孝を重んじる點に在るので、内戚を系統の意で呼び換へるならば父系・父統となる筈であり、男系といふ語は新儒教的ではない。古來の日本の傳統に近代的漢語をあてはめた造語である。
 何故かは知らないが、男系は近代以前から續いてきた。その不文律を成文化したのが明治の皇室典範の「男系」であらう。西村幸祐氏新著『日本人に「憲法」は要らない』
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が數日後に發賣されるので樂しみにしてゐるが、男系もまた何らかの古來の傳統である。「家長父長制」のやうな近世的制度ではない。Y染色體を無意識に保つためだったのか、生物としての人類の本源的形態に根差すのか、ほかに何のためか既に分からない。高校でならった本居氏流儀に言へば、合理的「からごころ」でなく、言葉にならぬ「やまとごころ」を象徴するのが男系の傳統といふことにならうか。
『日本人に「憲法」は要らない』

 日本は島國なるがゆゑに、變はらぬことの價値の重さがある。諸外國とは違ふ。世界の主要國のうち、島國はイギリスと日本だけだが、イギリスは征服王朝が入り亂れた。日本は二千數百年前の彌生融合以後ずっと單一的傾向が強い。彌生以前では繩文文化は實に一萬五千年もの年月を超えて、單一的なることが特徴であった。百世不易の單一性は日本の國柄である。ドーバー海峽わづか三十キロメートルと、對馬海峽二百キロメートルとの違ひが一つの原因だらう。
 私は守舊を唾棄する。復古・好古を信條とする。尖閣研究で古史だけを本務とするのはそのゆゑである。現代國際法で隣國に勝ってもちっとも面白くない。復古を以て勝つからこそ尖閣研究に意義を見出し得るのだ。
 尖閣五百年の歴史を重んぜよといふ私の主張を、皇統繼承にかしこくもあてはめれば、男系を廢してはならない。幸ひに秋篠宮に皇孫が健やかに育っておいでだ。十數年後、皇孫のもとに心身ともに健康な女子が嫁がれるやう、宮内廳はしっかりと準備して欲しい。さうすれば皇統は磐石だ。

 ついでに言へば、現行憲法は極めて簡略である。自衞權について何も書いてない。自衞は日本人の自覺的責任に委ねられてゐる。繩文以來の日本文化圏は何故か千島から與那國までで絶える形となってをり、現在の國土と不思議にも神合する。この國土こそ自衞の精神を體現してゐるではないか。現行憲法を死文として憲法よりもさらに狹く自衞權を制限するのでなく、古來の傳統的精神を基本としつつ、現代國際法の自衞權を餘すところなく發揮すべきだ。リンク:
http://senkaku.blog.jp/2016072964323651.html
護憲派宣言! 改憲に反對します 改憲すると逆に尖閣を防衞できなくなる

皇孫