鍛冶俊樹の軍事ジャーナル
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にコメントしました。
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 この件、歴史が最重要だが、その前に。
 鍛冶氏、なるほど正しいが、正しさの途中までに過ぎない。チャイナは日本の先制防衞を待ってゐるが、日本もチャイナの挑撥を待ってゐる。なぜなら尖閣に自衞隊を常駐させず、空白域を作ることにより、チャイナの挑撥を呼び込んで、危機感を高めるために利用してゐるではないか。
 鍛冶氏の言ふ通りにチャイナ側から先制攻撃できないならば、尖閣に自衞隊が常駐を開始してもチャイナは先制攻撃できないのである。そして常駐が完了して尖閣危機は消える。尖閣危機が無いと色々困る日本の政治家もゐるだらう。
 但し自衞隊常駐を「日本が先に手を出した」としてアメリカが距離を取り、日米同盟が機能しない可能性はある。その可能性をつぶすのが歴史なのだ。國際法だけでなく長い長い歴史の100%の正義があれば、日米左翼右翼全國民の九割が自衞隊常駐を支持し、米政府も自衞隊常駐を支持せざるを得なくなる。
 さうなると尖閣問題は雲散霧消する。それは私が研究を世間に賣り込む機會の喪失にもなる。同時に尖閣危機を利用する政治家にとっても都合が惡い。これこそが、尖閣古史研究を産經が取り上げたがらない理由だらう。産經のやうに保守的勢力とのしがらみで商賣するメディアでなく、もっと自由な右派メディアに賣り込むしか私の活路は無いやうだ。勿論、今度就任した内閣官房委託事業特別研究員の仕事も活路の一つだ。

鍛冶俊樹

鍛冶俊樹の軍事ジャーナル【平成28年7月15日号】中国の没落
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 国際仲裁裁判所が中国の南シナ海領有の主張を否決した。中国の南シナ海侵略が国際的に認定された訳だ。これだけでも中国の痛手は大きいが、それに対する中国の対応は、もっと悪い。いわば、治療と称して傷口を更に広げてしまったようなものだった。
 中国政府はこの裁定を紙くずと呼び、従わないと明言したのである。これで、中国は単に南シナ海を侵略しているだけでなく、国際法を紙くずとしか見ない北朝鮮なみの暴虐非道な国である事を内外に証明してしまったのである。
 
 この対応により中国の国際的信用が低下するのは確実で、長期的に見た場合、中国の没落の起点となると言えよう。中国の軍事的暴発を懸念する向きもあるが、中国軍が日米同盟の鉄壁を打ち破れない事は、IT技術の発達した今日、コンピュータ・シミュレーションで猫にも分かる。
 その何よりの証左は、前号でも触れたが6月17日、東シナ海での中国戦闘機の日本戦闘機への挑発事件である。中国機が日本機にレーダー照準を合わせ、気付いた日本機が離脱したとされる。

 この事件は、2013年1月、東シナ海で中国の軍艦が日本の護衛艦にレーダー照準を合わせ、日本艦が離脱した事件に酷似する。レーダー照準を合わせるのは攻撃の準備であり、攻撃態勢を取ったことになる。だが両事件ともに中国側は攻撃していない。
 レーダー照準が合わされて攻撃されれば、被害は甚大であり、これを阻止する為に日本側が先制攻撃するのは正当防衛であり、国際法的に合法である。だがそうなれば、戦争が始まる訳で、日本は無用の戦争を避けて離脱するという紳士的方法を選択した訳だ。

 だが問題は、中国側が両事件ともにレーダー照準を合わせただけで、実際の攻撃に踏み切らなかったのは何故かという点だ。これは日本側に先制攻撃をさせたかったからである。挑発を受けて先制攻撃をしても国際法的には侵略と見なされないのだが、だからといって米国が日米安保を発動するとは限らない。
 米国の本音は日本と中国が支那事変の時のようにダラダラと戦争して、米国が漁夫の利を得る事にあるから、日本が先制攻撃したとなれば、「日本に侵略の疑いがないとは言えない」と声明して傍観するかもしれない。
 中国の狙いは、ここにあり、日本に先制攻撃をさせて日米同盟を機能させないようにする戦略なのである。巧妙と言えば巧妙だが、逆にいえば日米同盟が機能する限り中国に勝機がないと認識している証左であろう。

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