永山英樹氏の正論。

再び産経社説「媚中反台」疑惑についてー心配だ!社内に中国の手先はいないか
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以下轉載。
再び産経社説「媚中反台」疑惑についてー心配だ!社内に中国の手先はいないか
2016/05/15/Sun
■平和への努力を中国でなく台湾に求める産経

本ブログ五月十四日の文章「産経は台湾新政権を牽制するなー同紙ファンを裏切る親中姿勢か」に引き続き、再び産経新聞の社説の問題を取り上げたい。

産経の社説とは、十四日掲載の「台湾政権交代 地域の安定に資する道を」と題するもの。

台湾では二十日、民進党の蔡英文主席が総統に就任し、演説を行うが、社説はそれに対する要望を書き綴ったものである。

蔡英文永山1
なぜ産経社説は習近平ではなく蔡英文に注文を付けたのか

しかし問題は、この社説が中国のために書かれたように見えてならないことにあるのだ。

蔡英文氏は総統選挙で当選を果たした直後の一月二十一日、メディアの取材に対してこう述べた。

最後に、蔡英文氏が上記のように「既存の政治的基礎」について説明した際、実はこんなことも述べているのだ。

「今回の選挙結果は、私が主張した『現状維持』が台湾の主流民意そのものだったことを示した。台湾海峡の平和と両岸関係の安定と発展は双方共通の願いだが、しかし一方だけの責任ではなく、双方が共に努力すべきものだ」

これは中国に対して、あるいは中国の宣伝に惑わされる世界の親中勢力に対してのアピールだろう。平和を守るには、台湾だけが譲歩するのではなく、中国もまた歩み寄らなくてはならないのだとの至極もっともな訴えだ。

ところが問題の産経社説は、この平和への「努力」を、台湾だけに求めているのである。一方的に平和を破壊しようとする中国に対してではなく。

■狙いは台湾牽制―中国批判はアリバイ的

社説によると現在中国は、「『独立派』とみる民進党への政権交代を控え、外交分野で台湾への圧力を強めている。(中略)民主的な政権交代の意義を理解せず、次期政権の出ばなをくじこうとする横暴は到底、容認できない。中国共産党は台湾の武力統一も辞さないとの構えも崩して」いないという状況だ。

産經社説永山
これが産経が14日に掲載した問題の社説。玉虫色の内容で問題点は摑みにくいが…

こうした歯に衣着せぬ中国批判に、保守派層の愛読者層は拍手を送ることだろう。しかしただこの部分だけに幻惑されてはならない。もしかしたらそれは、中国迎合記事を書くに際して行う、中国批判のアリバイ作りであるかも知れないのだ。

そして「中国共産党は、『一つの中国』の原則を中台双方が認め、その解釈をそれぞれに委ねた『92年コンセンサス』の確認を、台湾の次期政権にも求めている」とも書いている。それは「民進党はその存在を認めていない」だということだが、実はこの辺りより、中国批判から台湾牽制へと矛先を移して行くのである。

■社説が書くほど中国は寛大ではない

ところで、社説が書くほど「中国共産党」は寛大ではない。

つまり「九二年コンセンサス」(九二年合意)を「『一つの中国』の原則を中台双方が認め、その解釈をそれぞれに委ねた」ものなどとは考えていないのだ。

そのように考えているのは台湾の国民党だけである。つまり同党は、「一つの中国」の意味について台湾側は「中華民国」と解釈し、中国側は「中華人民共和国」と解釈する、ということで合意したと説明するのだが、中共はそのような考え方を受け入れていない。

あくまでも「中国は一つ。中国とは中華人民共和国」との主張である。

中華民国の存在など断じて認めないわけだから、「九二年合意」とは台湾にとっては実に危険なものなのである。

そしてその危険極まりないものを台中交流の基礎にせよと民進党に求めることに躍起となっているのだ。

それは中国は平和統一(協議による台湾併呑)に向けたワンステップとしてである。

もし民進党がそれを受け入れるなら、「どんな話し合いもできる」(李克強首相)とラブコールを送ったり、それを拒否し続けるなら「地は動き、山は揺れることになる」(習近平主席)と恫喝しながらだ。

そして今、中国が注視するのが、蔡英文氏が総統就任演説で、はたして「一つの中国」の受け入れを表明するかどうかなのである。

■日本人なら中国に反対すべきでは

もし蔡英文氏がそれを拒否すれば、中国は地域の緊張を高め、「地動山揺」の状況を作り出す恐れがあるわけだが、日本人はこれをどう考えるべきだろうか。

それを考える上で、まずは台湾の民意を見るべきだろう。

新台湾国策シンクタンクが四月二十六日に発表した世論調査の結果によると、回答の五二%が九二年合意を対中交流の基礎とすることに反対。そして六二・一%が蔡英文氏が「九二年合意」を台湾との交流の前提と蔡手受け入れることに反対している。

ちなみに、「台湾は主権独立国家」だとする回答は七四%。「自分は台湾人と思う」は八四%で「中国人と思う」の七%を大きく上回っている。

こうした台湾主体意識の高さが、台湾人の「一つの中国」「九二年合意」への反撥を生み、そしてたとえ中国による「地動山揺」の恐れはあっても、蔡英文氏を総統に押し上げたということができるわけである。

民主主義国家である日本は、こうした民意を支持、尊重し、それを押し潰さんばかりの中国の覇権主義には反対を表明するべきだろう。

■産経は積極的平和主義を忘れたか

そしてそればかりではない。そもそも蔡英文政権が「一つの中国」を受け入れたところで、地域の平和と安定が維持されるだろうか。

仮にそのようにして戦略的要衝である台湾が将来、中国の勢力範囲に組み込まれて行けば、東支那海も南支那海もそれと同時に組み込まれて行き、アジア太平洋地域全体が「地動山揺」の状況に陥れば、日本の安全と独立も大きく脅かされることとなるだろう。

したがってやはり日本は、台湾が中国に妥協をするのを支持するのではなく、中国に妥協しないよう日台連携の強化を目指す以外にないのである。

それは決して難しいことではない。現在、積極的平和主義の名の下で豪比越印等との防衛協力を拡大しているが、それと同様に台湾との協力を進めて行けばいいのである。

しかし不可解なことに、日頃は積極的平和主義を支持する産経の社説は、話が台湾の政権交代となると、考え方が一変してしまうのである。「地域の安定に資する道を」なる社説に話を戻そう。

社説は中国が「92年コンセンサス」の確認を、台湾の次期政権にも求めている」とした上で、最後に蔡英文氏に対し、次のように訴えるのだ。

―――民進党はその(※92年コンセンサスの)存在を認めていないが、蔡氏は、これまで中台が積み上げた「既存の政治的基礎」を尊重するとの柔軟な考えもみせている。

―――蔡氏の就任演説には内外の目が注がれている。地域全体の安定を視野に、台湾の発展を実現できる賢明な指針を示してほしい。

要するに蔡英文氏に対し、中国を怒らせ「地域全体の安定」を損なうようなわによう、向こうに歩み寄るべきだと求めたのである。一種の牽制でもあろう。

いやそれより日本の読者に対し、「蔡英文はトラブルメーカー」「彼女に厳しい目を向けるべき」との印象を抱かせようとしているのかもしれない。そんなことをしても中国を喜ばせるだけだと思うが…。もしや、そういうことなのか。

■産経が中国の主張を知らないわけがない

ところで、社説も言及しているが、蔡英文氏が尊重するところの「既存の政治的基礎」とは何か。

その意味ついては蔡英文氏自身が、冒頭でふれた当選直後のメディアインタビューで、次のように説明している。

「九二年に両岸が会談を行ったという事実及び双方による求大同存異(小異を残して大同につく)との共通認識」

「中華民国現行憲政体制」

「両岸の過去二十数年間の協議、交流、連動の成果」

「台湾の民主主義原則及び普遍的民意」

こうした表明を社説は「柔軟」だと評価するが、あの偏狭な中国がこれを受け入れるだろうか。

そこには、あの国が決して見たくない「中華民国」「台湾の民主主義原則」「台湾の普遍的民意」の文字が並んでいるが、「一つの中国」だけは見られない。

そのため中国側はこれに対し「九二年合意が両岸の関係と平和的発展の政治的基礎。両岸が一つの中国に属するとの事実は変えることはできない」(国務院台湾事務弁公室・馬曉光報道官、一月二十一日)とコメントしている。

要するに蔡英文政権が「九二年合意」を受け入れない限り、台湾との「平和」は保証しないというのが中国の変えることのできない立場であるというわけだ。

蔡英文永山2
台湾が台中関係を安定させるには台湾の主権否定に繋がる「92年合意」を受け入れるしかない。産経は
それを蔡英文氏に求めるつもりか



そのことを産経が知らないわけがない。それを知った上で「地域全体の安定を視野に、台湾の発展を実現できる賢明な指針を示してほしい」と呼び掛けたのだから、つまりこういうことになる。

「蔡英文氏は既存の政治的基礎を尊重するだけでなく、さらには九二年合意をも受け入れ、台湾は中国の領土の一部であることを認めなければ地域の安定は保証されない。もっと賢明になりなさいなさい」

これ以外、他に解釈は成り立つだろうか。

■朝日の中国迎合記事と同じ手法だ

中国を批判しながら中国を満足させるという手法をよく見せるのが、朝日新聞など親中メディアの社説である。

たとえば朝日社説は以前、中国の南支那海での人口島建設の問題で、あの国の乱暴さは批判するものの、その一方でそれに対抗しようとする日米などに緊張を高めるなと訴えていた。

このように実に欺瞞に満ちた手法なのだ。それはあたかも、強盗を批判しつつも、それを取り締まろうとする警官にも何か問題でもあるかのように仄めかし、その足を引っ張るが如きもので、もし本当にそんな記事があれば、強盗はきっと大喜びすることだろう。

それと同じように中国も、しっかりと日米同盟を牽制してくれた朝日社説には満足したはずだ。中国に対する批判はあっても、それは読者を納得させるためにやむを得ず行ったものと理解し、朝日の友情(忠誠心?)を褒めて遣わしたくなったはずだ。

今回の産経の社説もそれと同じ手法ではないのか。中国の横暴さは批判しつつも、何の罪もない台湾の新政権をしっかりと牽制している。台湾だけに譲歩を求めるような不自然な書き方は、中国の代弁とすら受け取れる。

もちろんこれを書いた者には何らかの意図があるはずだ。やはり朝日がそう見えたように、中国への忠誠心の表明を狙ったか。実は私が知るだけでも、同じような内容の社説は過去に二回掲載され、そのどれもが同一人物に書かれたような形跡がある。

■これでは中国の操縦を疑われても仕方ない

台湾の政権交代に関する今回の社説を、なぜ事後でなく事前に書いたのだろうか。

もし政権交代後であれば、日本では反中国的な保守派層を中心に、親台感情が一気に高まる可能性が高い。そうした状況を恐れる中国は、保守派層が信頼を寄せる産経などを操縦し、蔡英文氏が「地域全体の安定」を害しかねないトラブルメーカーとの負のイメージを予め広めておきたいところだろう。そこで産経内部の親中派が、その期待に応えようとこの社説を書いたのだろうか。

ちなみに中国の取込み工作(統一戦線工作)は、相手が敵として手強ければ手強いほど熱心に行われる。

私のこうした推理に対し、「産経は親米メディアであり、社説は米国の蔡英文氏への警戒感を代弁したものだ」との異論も聞かれた。それはそれでごもっともな見方だが、しかし実際の米政府の現在の蔡英文氏の態度はどうだろう。

たとえば国務省東アジア太平洋局のスーザン・ソーントン首席副次官補は五月四日、台湾メディアの取材に対し、蔡英文氏についてこう述べている。

「公開の場で海峡両岸の現状を維持する、北京と平和で安定した関係を持続するとの約束をしてきたが、彼女の行動はそれと一致している」と。

このような認識が持たれているからこそ、蔡英文氏は昨年の訪米で、あの国の政府から厚遇を受けたのではなかったか。

このように米国は、決して産経の社説ほど警戒感を剥き出しにはしていない、というのが私の印象だ。そして社説は親米派ではなく親中派の主導で書かれた、というのが私の推測、想像である。

もちろん産経自身はそれを否定するだろうが、しかし私としては、そう疑わざるを得ないのだ。

「地域の安定に資する道を」と訴えるなら、一方的に覇権主義的姿勢を強化する中国に対してだけ訴えるべきだったし、むしろそうすることが「産経らしい」と言えるのではないか。しかしそうしなかったわけだから、やはり中国と繋がった者が社内にいるのではないかと疑い、心配するのが自然だろう。