英米系地政学で考える尖閣諸島問題
日本はアジア華人社会との連携を探れ
上久保誠人 [立命館大学政策科学部准教授]
http://diamond.jp/articles/-/41714?page=6
 日本にできることは何だろうか。米国に守ってもらうために、日本の立場を主張するだけでは足りないようだ。また、地政学的な意義を米国に説いたとしても、そもそも「米国がアジアでの覇権から撤退すべし」と考える立場の人間が意思決定の中心となったら、なんの説得力も持てなくなってしまうだろう。

 それでは、安倍晋三政権が狙う「憲法改正」によって、自主防衛が可能な戦力を保持するか。だが、現実的に急拡大する中国軍の侵攻を防ぎきるだけの軍備増強が可能だろうか。また、軍拡路線は中国を更に強硬姿勢にさせ、米国の支持も得られないだろう。結局、尖閣諸島の問題は、米国の意向次第であって、日本としては打つ手がないということだろうか。

 いや、そんなことはないはずだ。……例えば台湾だ。中国と一緒になって尖閣諸島の領有権を主張しているが、実際は中国による尖閣諸島の軍事的支配は絶対に認められないというのが本音だ。尖閣諸島を中国が軍事的に実効支配すれば、台湾は米国・日本との軍事協力関係を分断され、孤立する。瞬く間に中国に占領されてしまうことになるだろう。

 また、中国軍が尖閣諸島を実効支配し、太平洋に進出すれば、香港、シンガポール、マレーシアなどへの軍事的影響力も強くなる。市場のルールに基づいて欧米と商売をしてきた華人社会の経済活動は制限されていく可能性が高い。



上久保誠人



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